展覧会
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海のシルクロード 絣の道
布の織り上がりを思い浮かべ、糸の段階で染め分けてから織り成していく絣(かすり)。模様がかすれた風合いに仕上がることがその名の由来です。絣の種類には大きく分けて3種あり、経糸(たていと)のみに先染めされた糸を用いれば経絣、緯糸(よこいと)のみであれば緯絣、両方に用いれば経緯絣と分類されます。その中でも、経緯両方の絣糸を調整しながら織らなければならない経緯絣は、現在では、インドとインドネシアの一部、そして日本でのみ制作されています。
現存する最古の絣布としては、法隆寺の名物裂(ぎれ)「太子間道(たいしかんどう)」が挙げられます。7世紀、聖徳太子の頃に中国から舶来した間道織のことですが、その織られた場所はインドともタイともいわれ、いまだ明らかになっていません。しかし、インドのアジャンタ石窟壁画には、経絣の衣裳を身に着けた華やかな女性たちが描かれており、その起源を物語っています。
絣はインドを源流とし、シルクロードを経てヨーロッパや中国にまで及びました。先述の「太子間道」もこうして日本に伝わったものですが、その貴重な裂は多くの人の目に触れることはなく、技法も伝わりませんでした。しかし、インドからインドネシア、フィリピンなどへ伝播した絣は、14世紀末から15世紀にかけての東南アジアとの交易を通して琉球(沖縄)へ伝わり、固有の繊維素材や染色と結びつき開花していきました。その後、17世紀に薩摩を経由して日本各地へ伝わると、当時盛んに栽培された棉と藍によって、木綿と藍染めで構成された絣へと発展していきました。このように、東南アジアを通じて日本へ普及した道は航路によるもので、陸の伝播ルートであるシルクロードに対し、まさに「海のシルクロード」といえるでしょう。
本展では、第1章として色あざやかで軽やかな絹のパトラサリー、アニミズムに結びついたスンバ島の祭壇布など、世界の絣を第1民芸館で、第2章として琉球王朝時代に織られた色柄が美しい沖縄の手縞や、ジャパンブルーと形容される藍染めによる絣布など、日本の絣を第2民芸館で展観します。それぞれの地域の風土に育まれた豊かな絣を、その伝播ルート「絣の道」とともにお楽しみください。
また、第3民芸館では、藤本巧写真紀行「絣の道 インド、インドネシア、そして沖縄」を開催します。藤本巧氏〔1949-〕は、2020年に土門拳賞を受賞した写真家で、約40年前に、絣織りに従事した村々の様子を訪ね歩いて記録しました。経済発展を遂げ、多くの手仕事が途絶えつつあるなか、氏の写真作品はとても貴重な記録です。ぜひ、この機会にご高覧いただければ幸いです。
- 開催期間
- 2025年06月28日(土)
〜2025年09月21日(日) - 観 覧 料
- 一般800円 高校生・大学生600円 高校生、大学生の方は学生証をご提示ください。
- 会 場
- 第1・第2民芸館